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かめちゃんのBlog

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2004年04月15日

喜びと不安の伝播

 ようやく人質3名が解放された!
 いやぁ、よかった、よかった。この1週間は、本当にやきもきさせられ、永田町に出向いて、デモに参加してやろうかとすら思ったほどだ(思っただけ)。その後、またしてもふたりの日本人ジャーナリストが拉致されたようで、憂鬱は続くよどこまでも……ではあるが、まあ、3名が無事だったことは本当にうれしい。
 その吉報を聞かずして、ひとりの作家が死んでしまった。鷺沢萠さんだ。11日未明のこと。どうやら自殺らしい。彼女の作品は、実のところ、読んだことがなかった。だから、今朝、その訃報を聞いたときは、35歳の若さで……と驚いたけれど、それだけだった。
 それがいま、もしやこの人質解放のニュースを聞いていたら、死ななかったんではないのか? なんて勝手な憶測が頭をよぎっている。実はいま、手元に今年2月に発行されたばかりの彼女の絵本『赤い水、黒い水』がある。たまたまインターネットの本屋さん、アマゾンで、ベストセラーをチェックしていたときにひっかかったのだ。65位だった。
「あ、彼女の作品が……」と興味を持ち、内容を調べてみると、この絵本はまさに9.11のショックから生まれたもののようだった。もちろん、比喩されてはいるものの、テーマは戦争、宗教、そして本当の幸せとはなにかを問うものだ。
 で、読んでみたくなった。culiに「帰りに買ってきて」と頼み、そしてものの15分(なにせ薄い絵本だから)で読み終わった。
 ストーリーは、とっても易しくて、そんな重いテーマを描いているようには思えない。だけど、メッセージはストレートで、何がいいたいのかはわかった。どうやら、自分の中の疑問を投げかけているようである。
「よかれと思ってやったことが、結果的に、幸せをうばってしまった。こんなことをあなたの信じている宗教は求めているのですか?」てな感じのこと……だと思う(読むヒトによって捉え方は違うだろうからね)。
 そして、彼女のあとがきを読んで、もしや、人質事件のショックと、このもどかしい現実すべてに、絶望してしまったんじゃないのか? との疑問をいだいたのだ。
 彼女はあとがきにこう書いている。

戦争の記憶は歳月とともに薄れる。薄まった記憶を継承しているだけの私もやはり、現在、「世界では、何かたいへんに良くないことが起きている」、と言うより他ない。……(中略)……その上、「right in front of us」つまり目の前で起きている出来事でもないから、我々の感覚は鈍磨する。しかし、それは今ひたひたと足音を立てて、我々の「目の前」に近づいてきている。

 つまり、戦争やテロは実際に起きていることは報道で知ってはいるが、自分の生活に直接関わるような出来事じゃない。報道をすべてシャットアウトした生活をしていれば、何事もない、平和な世界で生きているだけなのだ。だけど、それは知らないだけで、その「よくないこと」は、確実に身近に来ている……ということだろう。
 人質事件は、自分の知り合いが関係しているわけじゃない。ただ同じ国民ってことだけだ。だけど、なぜか、ひとごとには思えずに、家族の姿をテレビで見ながら、一緒に一喜一憂してしまうのだ。これはどういうことだろう。
 香山リカ氏が、何かの雑誌で、確か「鬱病のヒトが増えている背景に、イラクがある」てなことを書いていた(裏覚え)。直接自分には関係ないことでも、不安は伝播するものなのだ、ということのようだ。
 イラクで何が起きようと、誰が拘束されようと、「関係ないじゃん!」と思っていても、どうやら、身体は反応してしまうものらしい。
 鷺沢萠さんのサイトにある日記からは、自殺するような雰囲気はまったくない。仕事も順調で、6月には、ご自分がプロデュースする舞台も控えていた。おまけに犬を飼っている。犬を置いて死のうと思うだろうか?
 だから、自ら死を選んだ本当の理由なんてわからない。ただ、間接的な不安が、直接的な不安に変わりつつある現状を、敏感に感じてしまったのだろうと、なんとなく思うのである。
 もし、解放された吉報を聞けば、伝播するものは不安から喜びに変わり、自殺するほどの気持ちにならなかったのではないか?
 憶測だ。ともあれ、ご冥福をお祈りします。

赤い水、黒い水
鷺沢 萠 水崎 真奈美

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投稿者 かめちゃん : April 15, 2004 06:20 PM

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