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2004年08月26日

読書の季節『神のふたつの貌』の巻

   はたして、エンターティンメント作品のおもしろさとは、「えっ!」と息のむ予想外のストーリー展開と「あっ!」と驚く巧みなプロットで「ほほほ、騙されました? ね、意外だったでしょ?」てな作者の笑い声を聞くことなのか?
 確かにうまい。読ませる……って、ああ、そうだった。なんの本かといえば、貫井徳郎氏の『神のふたつの貌』である。彼の作品はこれが初めて。代表作は『慟哭』と『プリズム』らしいのだが、あらすじを見てこれに決めた。
 物語はド田舎のプロテスタント教会の牧師の息子「早乙女」の神さま探し……である。将来、父のあとを継ぐことになるのに、彼にはいっこうに神の声は届かない。「神はほんとうにいるのだろうか」と沈黙を守り続ける神とは何かをひたすら考えるのだ。まるで遠藤周作の『沈黙』か? と思いきや、そうじゃない。この作品は、テーマが宗教であっても、エンターティメントだ。
 早乙女少年は先天的無痛症という、肉体的な痛みを感じにくい体質である。それが精神的な痛みをも感じない風に描いているが、これは後天的なものだというのは、彼の親子の関係からうかがえる。
 さて、痛みを知らない彼は、ようやく神を知る道を見つける。殺人である。そしてその因果は、父と早乙女、早乙女とその子と、世代を超えて、めぐりめぐるのであるが……。
 その仕掛けが非常に巧みで、第三章まで読み進めたときに、「あっ! やられた」と作者の筆に騙されてきたことに気づく。まるで神の声のように頭上から「や~い、騙された~」という声が聞こえてくるのだ。
「まったくも~ぅ、うまいんだからっ」
 だけどこの作品は、こういう読み方でいいのだろうか? その疑問は、あっけなさすぎるラストで渦を巻く。
「こんな終わり方じゃダメ!」
 と一読者として作者にダメ出ししたいほどだ。このすっきりしない感覚をどう処理すればいいのか迷うではないかっ。
 神はなぜ、このような不幸な世界を創ったのか。なぜ、この痛々しい人生から救い出してくれないのか。なぜ、ずっと沈黙を守り続けるのか……。
「答えは、神さまはいないからです」
 という信仰心のないものでも、一度は考えてみたテーマだろう。貫井氏は、この出来の良いプロットで「騙されたでしょ~」と言いたかっただけ? ではないだろう。だけど、同じテーマなら、遠藤周作の『沈黙』の方がズシリとくる。なんだかもったいない。おもしろいけど、深くない。もし、『沈黙』同様、ズシリとくるものがあったなら、彼の他の作品も読んでみようという気になったろう。でも、いまいちならない。物語の意外性を保ちつつ、ズシリとくる作品……さて、次は誰を読むべきか?


神のふたつの貌
貫井 徳郎

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投稿者 かめちゃん : August 26, 2004 11:48 AM

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