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かめちゃんのBlog

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2004年09月21日

読書の季節 『安心のファシズム』の巻

 あ~こわ。久々に、おっそろしい本を読んだ。岩波新書の『安心のファシズム』(斉藤貴男著)である。
 ファシズム? ナチスの話かよ……って違います。現代日本の話です。便利で安心できる世の中なら、多少の人権や自由はないがしろにされても仕方あるまいという流れが出来上がっている! みんなそれでいいのかーっ? ってなことを訴えている本です。
 その内容は、まだ記憶に新しいイラクの人質バッシングにみられた日本人の心情からネット社会にはびこる差別、携帯電話や自動改札機などのテクノロジーの生活支配、有効性を十分検討せずに設置され続ける監視カメラなどなど、具体的な例をあげて検証(警告?)しています。
 ま、いろいろ書いてありますが、彼の言いたいことの本質は、あとがきにまとまっている。それをまたまとめると、こういうことだ。
「ヒトビトが、より巨大な権力と巨大テクノロジーと利便性に支配されることに安心を求めすぎるとファシズムを招き、やがて(それら巨大権力に)かならず裏切られる」
 だけど、著者の斉藤氏の怒りに水さすようだけど、たぶん、「それでいいよ」って答えが多いんじゃないのかな~と思うのだ。たとえ差別や貧富の格差(つまり支配と被支配の完全な区別)を生むことになっても「そうなったらなったで仕方ないよ」……ってな具合で。
 たとえば、誰かに盗聴されているかも知れないと言われても、携帯電話を手放すヒトは少ないだろうし、監視カメラは誰が見てるかわからないんだよと言われても、気にするヒトは少ないだろう。スリ現場のカメラに映っていたからと警察にしょっぴかれてもしかたない。それよりも、便利で安全になればいいのだ、と。
 巨大産業界や政界が
「余計なことは考えなくてもいいんです。みなさんの生活は、我々がお守りします。あなたがたは、我々が作り与えた世界で安心して生きていればいいのです」
 というならば、たとえ利益を独占的にむさぼられようが「喜んでお任せします」と頭をさげるヒトは少なくあるまい。というか、すでに頭をさげている。たとえば(斉藤氏も書いているが)、サラリーマンの源泉徴収と年末調整。
「納税者の義務として、これからは会社に任せず、各個人で確定申告するように制度を変えます!」と訴える政治家がいたとしたら、いったい、どのぐらいのヒトが彼を支持するだろう?
「ぜったい、そうするべきだ!」と確定申告してる者からすれば思うことなのだが、サラリーマンなら「そんな面倒なことをさせるな!」というヒトのほうが圧倒的多数じゃないだろうか? サラリーマン時代、経理課の社員に自分の給料を把握されていても気にしなかったし、面倒なことを会社でやってくれて助かる……なんて思っていたのだ。とうぜん、税のことに関心など抱かない。
「我々の考えた制度で安心して生活してください」
「はーい。使い方はお任せしまーす」で、気が付いたら増税である。
 また、いまはごたごたしている野球。合併騒ぎが起きなければ、巨人優位のシステムであったとしても、十分楽しんで観戦していたのではないか? それに、芸能界もそう。ジャニーズのタレントばかりがおいしい仕事を占めていても、楽しんで観ているではないか。たとえ一部の巨大企業が独占的に提供するだけの娯楽であっても、楽しければいいのである。
 映画『イノセンス』のような世界(安全保障のためなら公安が脳内監視しても脳を乗っ取ることも許される)をなんの不快感もなく観ていたヒトは、たとえ本当にそんな世界になったとしても、安全さえ保障してくれるのなら、権威者に喜んで脳の中を披露してもいいと思っているのだろう。
 封建時代、ヒトは生まれながらにして、運命は決められていた。近藤勇があと50年でも早く生まれていたならば、叶うはずのない武士になる夢など抱かなかったに違いない。農民は農民の役割を担って生まれてくる。貧富の差、身分の差はあるのは当たり前で、そんなことに疑問を抱くヒトなどほとんどいなかっただろう。ヒトは時代という環境と離して語れるものではないのだ。
 今後、斉藤氏のいうように、勝ち組と負け組がキレイにわかれ、社会的身分制度が自然にうまれることになるかも知れない。だけど、その時代にあっては、それがあたりまえなことで、疑問すら抱かなくなるんだろう。あたりまえのことがいかにおかしなことか、その時代の中にいては、わからないものだ。
 この本を読んで「なんでそんなことで怒るの? それでもいいじゃん」というヒトは少なくないだろう。
「与えられた自分の仕事をするのが精一杯。ここで自己実現できればいいんだよ」というヒトの考えはごくまっとうな考えに思える。
「やりがいのある仕事と、平凡でも安定した生活があるなら、それ以上のことは望まない」
 そういうヒトビトに、「もっと社会のことを考えてくれ。このままではファシズム国家になってしまう!」というメッセージなど、むなしいだけだ。
 それに、斉藤氏の主張に簡単に同意することは難しい。この世の中、ある程度の意図的なコントロールは仕方ないことではないのか? ただ、いまの流れが、とんでもなく恐ろしい方向に向かいそうなイヤ~な予感はホンモノ。
 ま、そんな本です。

安心のファシズム―支配されたがる人びと
斎藤 貴男

岩波書店 2004-07
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投稿者 かめちゃん : September 21, 2004 12:39 PM

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