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かめちゃんのBlog

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2004年10月09日

聞き上手

 ミヒャエル・エンデの『モモ』の主人公・モモは、カウンセラーではない。だけど彼女の元には、話を聞いてほしいというヒトビトがひっきりなしに訪れる。素敵なアドバイスをするわけではない。ただ根気よく、相手の話を聞いてあげるだけだ。
 何時間も話を聞いているうちに、話している本人自身が自ら答えを見つけていく。彼女は特別な女の子ではない。ただ、普通の子どもと違うのは、学校に行っていないため、時間をいっぱいもっていることだ。言い方を変えればヒマ。その時間を、彼女はヒトの話を聞くことに使っている。
 昨日、NHKハイビジョンで、モモのような青年のドキュメンタリーをやっていた。「お話聞きます。無料」という看板を出して、新橋や渋谷の駅前に座っている男の話だ。彼は松方バンダムという名前で、29歳。お笑い芸人として吉本興業にいたのだが、2年で挫折。いまは家庭教師のバイトをしながら、週に3日(だったかな?)、駅前に座る。話を聞くのは仕事じゃない。趣味なんだそうだ。
 そんな彼の前に座ったヒトビトの数は、2年半で1万2000人を超えたという。スゴイ数だ。女子高生からご年配まで、さまざまなヒトが彼の前に座り、話を落としていく。
 バンダム氏もカウンセラーじゃない。ただ、アドバイスを求められれば、自分なりの意見は言う。話が弾めば自分の話をして盛り上がったりもする。だけど、いくら相手がアドバイスを求めても、なにも答えられないときもある。そんなときは、ただ、話を聞いてあげるだけだ。
 ドキュメンタリーでは、リストラされて家賃が払えないのに仕事をする気力が起きない中年男性、15年もの不倫関係に悩み自殺未遂を繰り返す30代の女性、なにかあるんじゃないかと高校時代から10年間渋谷に通い続け、いまだなにも見つけられないとぼやく主婦、21歳で人生が長すぎると退屈しているホスト、刑務所から出てきたばかりでただ、話を聞いてほしかったという青年、過食症の自分に嫌悪感を持ち恋愛に前向きになれない若い女性などなど、そんな通りすがりのヒトビトが、見ず知らずの彼に話をしている姿を追っていた。
 本当に、さまざまなヒトがいるもんだ。彼らはなぜ、見ず知らずの男に心のうちを話そうと思うのだろう。彼らはまったくの孤独というわけじゃない。家族もいれば、友人もいる。だけど、そんな身近なヒトビトには話さずに、全くの他人に話をする。ネットの掲示板と同じ? 「まったくの他人」とは、現実の自分の世界の住民ではないのだ。だから、現実の世界を脅かすことなく安心して自分をさらけだせる……そういうことなのだろうか。
「お話聞きます。無料」
 無料というのが心地よい。仕事じゃなくまったくの他人のために時間を使うことは難しい。自分の意見を主張することなくヒトの話を聞き入れてあげられるヒトなんて、会ったことがない。冷たいヒトが多すぎるというわけじゃない。自分のことで忙しすぎて、余裕のないヒトビトが多すぎるんだろう。
 殺伐とした都会の片隅で、こういう活動をしているヒトもいるんだと思うとうれしくなる。もし首相だったら、こんなヒトにも国民栄誉賞をあげたくなるけどな。

投稿者 かめちゃん : October 9, 2004 01:03 PM

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