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2005年03月30日

今週のオススメ本『風の王国』

2005-03-29.gif「日本の山にはね、不思議な道があって、その道を使い、ものすごい勢いで移動する幻の民族がいるんだよ~」って話をきいたのはいつだったろう。
 その人々は「サンカ」という呼び名で知られている。戦前、三角寛という大衆文学作家が、彼らを題材にした奇怪な小説(?)を書き、大流行したらしい。民俗学の柳田國男氏が世に知らしめた……ともきくが、たぶん、耳にした話ネタは、三角氏の小説の流れからのものだと思う。
 数年前、その三角寛の住んでいた雑司が谷の邸宅に行った。いまは『寛』という料亭になっているのだ。昭和初期の香り漂う座敷でいただいたお料理……はすっかり忘れてしまったのだが(懐石かな)、玄関や廊下に飾られていた小説の挿絵や文豪の写真などは目に焼きついている。ただ、それらの絵や写真から「サンカ」と呼ばれた人々の現実的な姿は見えてこなかった。フィクションというより幻想の世界? というイメージだ。
 いつだったか「この国は単一民族」と公言した政治家がいたけれど、そのときアイヌ民族とともに浮かんだのが、このサンカと呼ばれた人々の存在だ。彼らは、戸籍を持たず、財産を持たず、奥深い山を移動し生きていた……とされている。なにしろ史料がまったくと言っていいほどないらしく、研究者もほとんどいないため、謎なのである。ただ、サンカではなくとも、山中の掘っ立て小屋に住み、竹細工をつくり、川で魚やすっぽんをつり、それを売ってほそぼそと生活していた人々はいたらしい(『幻の漂白民・サンカ』より)。1960年代には、サンカもそういう人々の姿も消えてしまったらしい。里の人々と同化した……ということだろうか。
 さて、その「サンカ」と呼ばれた人々を「自由の民」として描いた小説を読んだ。五木寛之の『風の王国』だ。昭和62年の発行ということで、少々、昔の小説だけど、文体は滑らかだし読みやすかった(っていうほど古くないか)。主人公は、世界中を旅して歩いた経験をもとにフリーライターとして生きている青年。彼は取材の中で自分の出生を探り当て、表の世界と裏の世界が奇妙に重なりあい息づいている場所に身をおくことになる。
 知らぬは本人ばかりかよ……とあきれるほど、脇を固める登場人物たちのほとんどが「関係者」ばかりだったのにはいささか興ざめしたけれど、あとがきにある「参考資料」の量をみれば、「なるほど!」と手を打ちたくなるほど、真実味のある「フィクション」だった。明治政府が、「非・国民」であり続ける彼らに、いったいなにをしたのか。これが歴史には刻まれない真の歴史の青写真だとしたなら、「まったく罪なことを」……である。
 この小説は、「サンカ」の末裔たちの今を描いているけれど、彼らのような民が現在もいるかどうかは謎である(いそうもないけど)。ただ、どんなに条件をよくし、ひとつにまとめようとしても、必ず、そこからこぼれようとする勢力は出てくるものだ。現に謎でもなんでもなく、国という枠をはずれた不思議な集団がいくつもある。オウムもそうだけれど、ちょっと前に騒がれた白い服の宗教団体は、定住せず、車で移動しながら生活しているようだった。あるいはニートと呼ばれる若者たちのなかにも、国という、社会という常識の枠を窮屈に思い、「なにもしない」生活を選んでいる者も少なからずいるのではないだろうか。
 小説はあくまでフィクションだけれど、そんな枠から逃れようとする人々に、枠に収まっている人々はどのように接していけばいいのだろうか。少なくとも、(小説設定上の)明治政府の役人のようなことだけはしちゃいけませんな。


風の王国
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投稿者 かめちゃん : March 30, 2005 01:05 AM

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