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2005年05月24日

オススメ本『月の裏側』

2005-05-24t.gif 恩田陸の本を続けて2冊読んだ。今回はその1冊『月の裏側』についてなのだが、この人、ぜったい、同世代! と思って調べてみたらやっぱりそうだった。なんというか、読んでいてシンクロするのだ。思春期を思い起こさせるというか、その頃の友人と話をしているような感覚になるというか……。
 それはさておき、『月の裏側』という作品。これってSFホラーの部類にはいるのか? ある街の人々が、得たいの知れない生物に乗っ取られてしまう……と書けばB級ホラーっぽいのだが、単に恐怖を提供している小説ではない。飛躍するが、『新世紀エヴァンゲリオン』も同じテーマだった気がする。つまり、人々は個人でいることに疲れている→ヒトビトともっと理解しあいたい。深いところでつながっていたい→意識を共有できたらきっと、負の感情(対立、憎悪、嫉妬など)はなくなる→個性があっても孤独であるより、個性がなくてもみんなと一緒がいい→心地よい環境でみんなと一緒、考えることも、感じることも、みんな一緒。それが平和で理想の世界……さあ、あなたは同調しますか? ってなことだ。
 エヴァでは、確かテレビアニメのシリーズのラストは、みんなひとつの意識にとりこまれ、そこでようやく煮え切らない主人公が、自我をみつけて「おめでと~」となった気がする(違うかも)。が、とにかくそのラストが気に入らないと、ファンが騒いだものだから、映画化でラストを描き直した。そのラストはみんなとりこまれちゃったけど、たったふたりだけアダムとイヴのように取り残される。が、仲良くともに生きていこうではなくて、互いに憎みあう感情からの再出発となる。ま、これでも納得しなかったファンは多くいたようだけれど、たぶん、納得する描き方というのは、みんなとりこまれることなく、もとの状態を守った! とすることだろうと思う。
 たぶん、『月の裏側』をそのまま映画化するとすれば、やっぱりブーイングが起きる気がする。このラストも、自分が飲み込まれることに抵抗することなく、成り行きに身をまかすことの心地よさ、たとえ抵抗してひとりだけいまの自分を守ったとしても、社会的マイノリティになってしまう、その不安を受け入れることの難しさ、そんなきわめて現実的で非感動的な描き方をしているからだ。
 誰もが得たいの知れない生物に取り込まれ、自分を改造されてしまうことなど望まない。だけど、こういう条件ならどうだろう。改造された本人は、自分が変えられてしまったことには気づかない。いままでどおりの自分だと思っている。意識も記憶も自分のままなのだ(取り込まれたことの記憶だけはない)。だが、身体はすでに人間のものではないし(外見は同じだが)、無意識も違う。無意識だけは、その異物と、取り込まれたヒトビトと共有しているのだ。だから、無意識で行う行動は、自然と同じになる。
 意識も記憶も自分のままなら、別の生物になってもいいだろうか。主人公たちはかなりがんばって抵抗する。だけど、街の人々が自分たちを残してすべて飲み込まれてしまったら、その後の世界はその別の生物たちが中心になり、元の人間は少数派となってしまう。無意識層でつながっている新人類と個人として完結している旧人類。いったいなんのためにがんばっているのか。向こうは進化しただけではないのか?
「もういいじゃないですか。向こう側にいきましょう」
 たぶん、同じ境遇にあったら(あうわけないだろうが)、「そうだね」と同調するだろう。そうはいえども、やっぱりラストは嫌な気分が残った。こんなラストには、やっぱり納得したくない。でも、この人の本はまた読みたくなってしまう。おかしなものだな。

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恩田 陸

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投稿者 かめちゃん : May 24, 2005 11:31 AM

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