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2005年09月28日

昔の動物寓話

2005-09-28.gif  図書館で借りてくる本の中で、時々「この本、買い!」と手元においておきたくなるものがある。まだ流通している本ならアマゾンで買えばいいのだが、すでに絶版、出版社も潰れてない! となると、古本屋をめぐりめぐらなければならない……というのは昔の話。いまの世の中、古本屋もオンライン! 調べてみると、数社で扱っていた。が、同じ系統の本(同じ出版社のシリーズ本)で気になるものが……。中身を見ずして買うのは少々ためらわれたので、結局、神田の古本屋に行ってみることにした。
 ネットでは「在庫あり」の書店に直行してみたものの、目的の本はすでにあらず。そのシリーズ本で一番気なっていた本もない。が、二番目、三番目に気になっていた本があったので、それをGETしてきた。
 欲しかった本は博品社の「博物学ドキュメント」シリーズの中の『フィシオログス』と『中世動物譚』。買ってきたのは『サイと一角獣』と『動物と地図』である。ほかにも、このシリーズには魅力的なものがたくさんあるのだが、金がないので目を瞑る(たとえば『シェークスピアの鳥類学』。彼は狩猟の達人だったそうで、作品の中の直喩、隠喩には鳥類学の知識がちりばめられているそうなのだ。へぇ)。
 さて、『フィシオログス』の話。これは西暦200年頃に書かれたとされるキリスト教的動物寓話(全55話)である。作者は不明。書かれた場所はアレキサンドリアで文字はおそらくギリシア語。翻訳版多数。1000年以上の長いスパンで版を重ねるうちに補充、編集構成も段階的に変わっていったということで、オリジナルを求めるのは難しいようだ。
 フィシオログスとは「自然について語る人」という意味。この人物が、聖書や古典から引用してきた動物(植物、鉱物も一部あり)について語り、「しかるに人間は~」とか「しかるに神は~」と、その動物の習性をキリスト教的教訓話に展開していく。つまり自然科学者なんだけど神父さんって感じだろうか。中世ヨーロッパでは、聖書と並ぶ大ベストセラーだったそうな。
 いま読めば「ウソばっか」と子どもでもあしらいそうな内容のものが多い(中には「カラスは一夫一婦で相手が死ぬと、もうつがいはつくらない」とか「ガゼルは遠くからでも狩人の姿が見える(視力がべらぼうにいい!)」とか現代の認識と同じ記述もある)。
 面白いのはフェニックスや一角獣などの幻獣も登場するところだ(いちおう、自然科学の本)。そのなかに「アリライオン」という聞いたこともない動物がいる。アリのように小さい動物かと思いきや、さにあらず。ライオンを父にアリを母に持つ哺乳類と昆虫のハーフ! しかも、父の食す肉も食べられなければ母の食すノギ(草の先端)も食べられずに餓えて死んでしまう。この動物からの教えは「二股かけるな(二つの道をいくのは罪びと)」……だそうで。
 なんでこんな奇妙な動物が生まれたのだろう。解説によれば、ヘロドトスの『歴史』やプリニウスの『博物誌』に出てくる「狐より大きいアリ」や、ストラボンやアイリアノスの著書にみられるライオンの一種「ミュルメクス(ギリシア語でアリ)」の影響、それに加えて七十人訳聖書(72人の訳者が72日間で訳したとされるモーセの五書)のヨブ記をあげている。この七十人訳、野牛を一角獣に誤訳したことでも有名で、この場合も、ヘブライ語のlayish(ライオン)をミュルメコレオン(アリライオン)と訳した模様。著者は言葉通りの動物を信じ、フィシオログスに語らせたということか。
 聖書は真理。フィシオログスはウソつかない(しつこいですが、自然科学の本)ってことで、中世まで不思議な動物たちの存在は、一般的に信じられてきたのだろう。だけど、本当のところどうなのだ? こんなけったいな動物を本当に信じたのだろうか。いや、現存する動物でも、たとえば「キツツキは中が空の木を見つけて巣を作る」とか、果たして信じられるだろうか(空っぽの木だったら、巣は下まで落ちるだろうが)。
 現代に転換してみると、ゴジラをはじめポケモンの怪獣を「いる!」と心から信じている子どもたちはいるだろうか? という問いと同じかも知れない。モリゾーとキッコロは万博が終わって森に帰った。ただのイベントキャラクターだと誰もがわかっていても、そういう物語をみんなで共有することが大切で、それが心地よかったりする。大事なのは事実がどうあれ、「みんなでなりきる、思い込む」ってことなのかも知れない。
 残念ながら『フィシオログス』のブームは中世どまり。近世以降、ほとんど顧みられることはない。現在の動物で『フィシオログス』を作ったら面白そうだけどなぁ。

投稿者 かめちゃん : September 28, 2005 11:36 AM

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